風の声が聞こえる
重い瞼を開くと、お母さんとむつみの顔がぼんやりと見えた。


「いづみ?わかる?」


「…かあさん…」


「良かった!良かったぁ…」


お母さんも、むつみも、どうして泣いているの?なんだか、変なの…。そう思って笑った。


ヨメ島に向かう飛行機が墜落して、私は奇跡的に助かった…と聞かされた。誰かが、私を生かしてくれている。誰かが、私を助けてくれたんだ…と、思った。


ふと、自分が右手に何か、握っているような感じがして、布団の中に隠れていた手を、出してみた。


「みかん…?」


なぜか私は、小さなみかんのような実を握っていた。


「えっ?何?」


お母さんとむつみが、私に話しかけた。ゆっくりと、手を広げる…。


みかんのような実は、キラキラと輝きながら、砂のようにサラサラとこぼれ落ち、手を広げた時には、どこにいったのか、わからなくなった。


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