風の声が聞こえる
夕飯の準備は、3人ですることになった。


「むつみはサラダの準備を、いづみは茹でたじゃがいもの皮を剥いて潰して。その間に私がコロッケの具を作るから」


母が、テキパキと指示をする。こんな風に3人で台所に立つのは、何年ぶりだろうか…。


トントントン…。むつみが、包丁できゅうりを切る。刃物を見ると、真っ赤に染まってゆく自分を思い出してしまうから、軽快な音だけを耳にして見ないようにする。


「いづみ、具を入れていいかしら?」


母に言われ、ハッとする。黙って頷くと、潰したじゃがいもの入ったボウルに具を混ぜ込んだ。


「衣つけるの、手伝ってね?」


母の笑顔につられて、作り笑いを返した。


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