聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~はじまりの詩~
―なぜ、そう思う。


その答えが、この想いのような気がした。

また会いたいと願う自分を、リュティアは必死で押し殺した。

会っては、殺されてしまう。だからもう、二度と会わぬのがいい。

けれど、また、会いたいのだ。どうして…

身の内で生じる激しい葛藤は、苦しいのに、愛おしい。

あの時溺れたフレイアに言ってあげられなかったことを、今ならはっきりと口にできる。


『でも時々こう思ってしまうの…どうしてこんな悲しい思いをしてまで、生きなければならないのかって。結局いつかはこんなふうに失うのに、なぜ人はこんなにも誰かを愛するのかしら…こんなに、こんなに、愛さなければよかったのかなって…』


苦しみも、痛みも、悲しみも、全部ひっくるめて、この世界は美しく、調和を保っているのだ。それは、しっかりと感じられれば、どんな時でも自分を“幸せ”にしてくれるものなのだ。

苦しみの先に、痛みの先に、悲しみの先に、朝日のように時が巡り、必ず昇ってくる新しい想いを拒んではいけない。時と共に必ずめぐってくる想い…それはきっと愛と呼べるものだ。

愛。

愛することは、どんな苦しみも痛みも悲しみも上回る、“幸せ”なことなのだ。

「ライト様…」

その名をそっと口にしてみた。

ただそれだけのことが、リュティアには“幸せ”に感じられた。

どんな残酷な運命が、二人を待ち受けているとしても。

やがてカイとアクスが駆けつけてくるまで、リュティアはライトが去った方角を眺め続けていた。
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