聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~はじまりの詩~
「いい気味だなシア! 戻ったら仲間の一人が、二人が川に落ちるところを見たというじゃないか! どれだけ私の寿命を縮ませれば気が済む! この、心配かけてっ」
若い男と同じくずぶ濡れのジョルデが、川岸を歩み寄ってくるのが見えた。
彼女が背中に負っているものを見て、リュティアは血相を変えた。
なぜならそれは、ずぶ濡れでぐったりしたカイだったからだ。
「…カイ!!」
「リュティアお嬢さんも反省しなさい。お前が落ちたと知って、カイなど今にも死にそうだったからな。それで、泳げもしないのにお前を追ってまっさきに川に飛び込んだんだぞ」
「カイ…ごめんなさい。そしてジョルデさん、カイを助けてくださってありがとうございます」
「お礼なら言う相手は私じゃないよ。私もすぐに川に飛び込んだが、カイを見失ってしまったんだ。突然現れた見知らぬ屈強な男がカイを岸に引き上げてくれなかったら、カイは生きていなかっただろう」
「見知らぬ、屈強な男…??」
「ああ。すぐに去ってしまったから、名前も問うことができなかったが…」
心当たりはまるでなかったが、その人にリュティアがどんなに感謝したか知れない。
「ほっとするのはまだ早いぞリュティアお嬢さん。まだ、カイの意識が戻らないんだ。水を飲みすぎたのか…」
「え…?」
ジョルデが川岸にカイの体を横たえる。
その体は力なく、顔色は蒼白で、リュティアは恐怖に駆られた。
カイまで失ったら…!!
「カイ! しっかりしてください! カイ!」
「…今すぐ人口呼吸をしてやらなければ、死んでしまうかもな」
ジョルデの声色が妙に芝居がかっていることに、リュティアは気づかない。
カイが死んでしまう…!?
迷っている暇はなかった。
リュティアはカイのそばにかがみこむと、迷わずその唇に唇を重ねようとした。
…丁度その時。
「う…うう」
カイがうめき声をあげて、瞳を開いた。
本人が知ったら自分の間の悪さをどこまでも恨んだだろう、このタイミング。
ジョルデがちっと舌打ちしている。
しかしリュティアは瞳を輝かせた。
「カイ! よかった! 目が覚めたのですね!」
「リュー…。よかった…無事で…本当に、心配したんだぞ…」
「ごめんなさい」
手を取り合ってみつめあう二人を見て、ジョルデはまあいいかとひとつ息をついた。
「さ、いつまでもこんなところにいないで適当な場所を探そう。話はそれからだな」
ザイドとシア、リュティアとカイは、それぞれの世界に没頭して、ジョルデの話などまるで聞いていなかった。
このメンバーで大丈夫かと、頭を抱えたくなるジョルデであった。
若い男と同じくずぶ濡れのジョルデが、川岸を歩み寄ってくるのが見えた。
彼女が背中に負っているものを見て、リュティアは血相を変えた。
なぜならそれは、ずぶ濡れでぐったりしたカイだったからだ。
「…カイ!!」
「リュティアお嬢さんも反省しなさい。お前が落ちたと知って、カイなど今にも死にそうだったからな。それで、泳げもしないのにお前を追ってまっさきに川に飛び込んだんだぞ」
「カイ…ごめんなさい。そしてジョルデさん、カイを助けてくださってありがとうございます」
「お礼なら言う相手は私じゃないよ。私もすぐに川に飛び込んだが、カイを見失ってしまったんだ。突然現れた見知らぬ屈強な男がカイを岸に引き上げてくれなかったら、カイは生きていなかっただろう」
「見知らぬ、屈強な男…??」
「ああ。すぐに去ってしまったから、名前も問うことができなかったが…」
心当たりはまるでなかったが、その人にリュティアがどんなに感謝したか知れない。
「ほっとするのはまだ早いぞリュティアお嬢さん。まだ、カイの意識が戻らないんだ。水を飲みすぎたのか…」
「え…?」
ジョルデが川岸にカイの体を横たえる。
その体は力なく、顔色は蒼白で、リュティアは恐怖に駆られた。
カイまで失ったら…!!
「カイ! しっかりしてください! カイ!」
「…今すぐ人口呼吸をしてやらなければ、死んでしまうかもな」
ジョルデの声色が妙に芝居がかっていることに、リュティアは気づかない。
カイが死んでしまう…!?
迷っている暇はなかった。
リュティアはカイのそばにかがみこむと、迷わずその唇に唇を重ねようとした。
…丁度その時。
「う…うう」
カイがうめき声をあげて、瞳を開いた。
本人が知ったら自分の間の悪さをどこまでも恨んだだろう、このタイミング。
ジョルデがちっと舌打ちしている。
しかしリュティアは瞳を輝かせた。
「カイ! よかった! 目が覚めたのですね!」
「リュー…。よかった…無事で…本当に、心配したんだぞ…」
「ごめんなさい」
手を取り合ってみつめあう二人を見て、ジョルデはまあいいかとひとつ息をついた。
「さ、いつまでもこんなところにいないで適当な場所を探そう。話はそれからだな」
ザイドとシア、リュティアとカイは、それぞれの世界に没頭して、ジョルデの話などまるで聞いていなかった。
このメンバーで大丈夫かと、頭を抱えたくなるジョルデであった。