聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~はじまりの詩~
「では…はじめ!!」
ピィ、と笛が吹かれたのが合図だった。
二人は剣を構え、互いの隙を狙って円を描くようにじりじりと動き始めた。
すっと背筋が伸びた美しい立ち姿のジョルデに比べ、カイは少々腰が引けている。何度も剣を握りなおす様を見れば、やはり彼が剣を大の苦手としていることを思わずにいられない。
なぜカイは意地になって試合に出るなどと言ったのだろう。
このジョルデ相手に、剣で勝とうなどと…。
案の定、勝負は一瞬で決した。
ジョルデの剣の一振りを受け止めきれず、カイは吹っ飛ばされ、剣を取り落したのだった。
「勝負あり! 勝者、騎士ジョルデ!」
カイは床に伏したまま起き上がることができないでいるようだった。
リュティアは彼がどこか痛めたのかと慌てて彼のもとへ駆け寄ろうとしたが、隣のザイドに止められた。
「大丈夫、どこも怪我してない。だが…ショックだったんだろう」
「カイ…」
フレイアが顔を泣きそうにゆがめ、リュティアをがばりと振り返った。
「どうしよう…ジョルデが相手なんてカイにあまりにも酷だったわ…。ごめんなさいリュティア。あなたたちを助けたくて、私が言い出したことなのに…」
フレイアの気持ちに嘘がないのは知っている。
だから大丈夫、それにまだ試合は二戦残っている…リュティアがそう言おうとしたときだった。
「うわあああっ! 危ない!」
頭上から男の叫び声が聞こえた。
え、と振り仰いだとき、リュティアの視界に映ったのは、――
落下してくる木材の束であった!
柱を補強するための木材の束を梁の上で運ぶ途中、大工の一人が手をすべらせたのだが、何が起こっているのか、リュティアにわかろうはずもない。
ただ、避けられないことだけがわかった。
ぶつかる…!!
ピィ、と笛が吹かれたのが合図だった。
二人は剣を構え、互いの隙を狙って円を描くようにじりじりと動き始めた。
すっと背筋が伸びた美しい立ち姿のジョルデに比べ、カイは少々腰が引けている。何度も剣を握りなおす様を見れば、やはり彼が剣を大の苦手としていることを思わずにいられない。
なぜカイは意地になって試合に出るなどと言ったのだろう。
このジョルデ相手に、剣で勝とうなどと…。
案の定、勝負は一瞬で決した。
ジョルデの剣の一振りを受け止めきれず、カイは吹っ飛ばされ、剣を取り落したのだった。
「勝負あり! 勝者、騎士ジョルデ!」
カイは床に伏したまま起き上がることができないでいるようだった。
リュティアは彼がどこか痛めたのかと慌てて彼のもとへ駆け寄ろうとしたが、隣のザイドに止められた。
「大丈夫、どこも怪我してない。だが…ショックだったんだろう」
「カイ…」
フレイアが顔を泣きそうにゆがめ、リュティアをがばりと振り返った。
「どうしよう…ジョルデが相手なんてカイにあまりにも酷だったわ…。ごめんなさいリュティア。あなたたちを助けたくて、私が言い出したことなのに…」
フレイアの気持ちに嘘がないのは知っている。
だから大丈夫、それにまだ試合は二戦残っている…リュティアがそう言おうとしたときだった。
「うわあああっ! 危ない!」
頭上から男の叫び声が聞こえた。
え、と振り仰いだとき、リュティアの視界に映ったのは、――
落下してくる木材の束であった!
柱を補強するための木材の束を梁の上で運ぶ途中、大工の一人が手をすべらせたのだが、何が起こっているのか、リュティアにわかろうはずもない。
ただ、避けられないことだけがわかった。
ぶつかる…!!