聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~はじまりの詩~
思わず目を閉じかけた、その時。
目の前を赤い影がよぎり―――
ガシャアン!!
と何かが砕ける激しい音が間近で生じた。
ぱらぱらと木片が頬に降りかかる感触に、砕けたのがたった今落下してきた木材であると理解する。
けれど、なぜ?
そう思って目の前の光景に目を凝らすと、すぐそばに新たな人影があった。
斧を構えた、筋肉の盛り上がるたくましい腕。
鍛え上げられた大きな背中。
そして赤い髪―――。
「アクス…さん?」
目の前の光景が、リュティアには信じられなかった。
こんなところに彼がいるはずがない。
それなのに、斧をおろし、振り返った彼は、どこからどう見ても、アクスなのだ。
幻…?
リュティアが目を丸くして呆然としていると、アクスは不機嫌そうに鼻を鳴らして、その場を去ろうとしていた。
「アクスさん! 待ってください、アクスさん! いったい、どうしてここに!?」
慌ててその腕をつかむと、アクスはさらに不機嫌そうな表情になった。
「…わからん」
「え?」
「私にもわからんと言った」
その声を聞くと、急に、リュティアの中で、何かが符合した。
「もしかして、道中今までずっと魔月と遭遇しなかったのは…アクスさんが守ってくださっていたから? そうなのですね!?」
「……」
「あ! カイを助けてくれた人影も、もしかして!?」
アクスは何も言わなかった。
それをリュティアは肯定ととった。
あれほど頑なに護衛はできぬと言っていた彼が、影で自分たちを守ってくれていたなんて…。リュティアは心の底から「ありがとうございます!」と叫んで礼を言った。
目の前を赤い影がよぎり―――
ガシャアン!!
と何かが砕ける激しい音が間近で生じた。
ぱらぱらと木片が頬に降りかかる感触に、砕けたのがたった今落下してきた木材であると理解する。
けれど、なぜ?
そう思って目の前の光景に目を凝らすと、すぐそばに新たな人影があった。
斧を構えた、筋肉の盛り上がるたくましい腕。
鍛え上げられた大きな背中。
そして赤い髪―――。
「アクス…さん?」
目の前の光景が、リュティアには信じられなかった。
こんなところに彼がいるはずがない。
それなのに、斧をおろし、振り返った彼は、どこからどう見ても、アクスなのだ。
幻…?
リュティアが目を丸くして呆然としていると、アクスは不機嫌そうに鼻を鳴らして、その場を去ろうとしていた。
「アクスさん! 待ってください、アクスさん! いったい、どうしてここに!?」
慌ててその腕をつかむと、アクスはさらに不機嫌そうな表情になった。
「…わからん」
「え?」
「私にもわからんと言った」
その声を聞くと、急に、リュティアの中で、何かが符合した。
「もしかして、道中今までずっと魔月と遭遇しなかったのは…アクスさんが守ってくださっていたから? そうなのですね!?」
「……」
「あ! カイを助けてくれた人影も、もしかして!?」
アクスは何も言わなかった。
それをリュティアは肯定ととった。
あれほど頑なに護衛はできぬと言っていた彼が、影で自分たちを守ってくれていたなんて…。リュティアは心の底から「ありがとうございます!」と叫んで礼を言った。