聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~はじまりの詩~
「でも、なぜ? なぜ、助けてくださるのですか?」
アクスはくしゃりと片手で自らの髪を乱した。
「それもわからん!」
アクスは少々混乱しているようだった。
こんなに余裕のなさそうな彼は見たことがない。おそらく、リュティアの前に登場する気はさらさらなかったのだろう。
「ただお前を見ていると…いらいらするんだ。あまりにも無防備で、ひ弱で、どうしようもなくてな…」
「アクスさん…」
「――ちょっと待って、アクスって、あのプリラヴィツェの英雄アクス!?」
横からフレイアが口をはさんだ。
「リュティア、彼と知り合いだったの?」
「ええ、一応」
「それはいいじゃない! すごくいいわ!」
「え?」
フレイアは急に明るい表情を浮かべてとんでもないことを提案した。
「アクスさんに聖試合に出てもらえばいいのよ! 天下無双の斧使いなだけでなく、剣も扱えると聞いたことがあるもの。残りの二戦を彼に出てもらえば、もしかしたらいけるかも知れないわよ!」
「アクスさんが聖試合に?」
「私が、だと…?」
彼らの会話はカイのもとにも届いてしまっていた。
カイがはじかれたようにどこかへ駆け出していくのを視界にとらえ、リュティアははっとする。
強いアクスをかわりに出すなどと、きっと屈辱が何倍にも感じられたに違いない。
「…カイ!」
しかし意外にも彼を追おうとしたリュティアを止める腕があった。
それは太い腕、アクスだった。
「あんな青二才は放っておけ。今は一人にした方がいい」
「で、でも…」
「私ももう去る。聖試合になど出るわけがない」
「ま、待ってください!」
リュティアは咄嗟に、アクスの腕を再びつかんでいた。
カイのことは気になるが、今はフローテュリア再興のために、王女として尽力すべきだとわかっていた。
フレイアの言う通り、アクスならばきっとジョルデに勝てる。
そのためにはなんとしても、アクスを口説き落さねばならない。
「見返りを差し上げると言ったら、どうですか?」
「…見返り?」
リュティアは心のままに、その「見返り」について語ったのだった。
アクスはくしゃりと片手で自らの髪を乱した。
「それもわからん!」
アクスは少々混乱しているようだった。
こんなに余裕のなさそうな彼は見たことがない。おそらく、リュティアの前に登場する気はさらさらなかったのだろう。
「ただお前を見ていると…いらいらするんだ。あまりにも無防備で、ひ弱で、どうしようもなくてな…」
「アクスさん…」
「――ちょっと待って、アクスって、あのプリラヴィツェの英雄アクス!?」
横からフレイアが口をはさんだ。
「リュティア、彼と知り合いだったの?」
「ええ、一応」
「それはいいじゃない! すごくいいわ!」
「え?」
フレイアは急に明るい表情を浮かべてとんでもないことを提案した。
「アクスさんに聖試合に出てもらえばいいのよ! 天下無双の斧使いなだけでなく、剣も扱えると聞いたことがあるもの。残りの二戦を彼に出てもらえば、もしかしたらいけるかも知れないわよ!」
「アクスさんが聖試合に?」
「私が、だと…?」
彼らの会話はカイのもとにも届いてしまっていた。
カイがはじかれたようにどこかへ駆け出していくのを視界にとらえ、リュティアははっとする。
強いアクスをかわりに出すなどと、きっと屈辱が何倍にも感じられたに違いない。
「…カイ!」
しかし意外にも彼を追おうとしたリュティアを止める腕があった。
それは太い腕、アクスだった。
「あんな青二才は放っておけ。今は一人にした方がいい」
「で、でも…」
「私ももう去る。聖試合になど出るわけがない」
「ま、待ってください!」
リュティアは咄嗟に、アクスの腕を再びつかんでいた。
カイのことは気になるが、今はフローテュリア再興のために、王女として尽力すべきだとわかっていた。
フレイアの言う通り、アクスならばきっとジョルデに勝てる。
そのためにはなんとしても、アクスを口説き落さねばならない。
「見返りを差し上げると言ったら、どうですか?」
「…見返り?」
リュティアは心のままに、その「見返り」について語ったのだった。