聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~はじまりの詩~
丁度その頃。

リュティアたちが探し求める聖具のひとつ、“虹の錫杖”が、魔月王猛き竜(グラン・ヴァイツ)、ライトの手に渡ろうとしていた。

「やめろ…その子は関係ない。お前たちの狙いは、これだろう」

「セラフィム様!!」

黄金の髪に水色の瞳の守護者が、ライト率いる四魔月将に向かって美しい錫杖を放り投げた。錫杖は守護者セラフィムの張った結界を抜け、しゃんと澄んだ音を立てて緑柱石の神殿の床に転がった。

結界を挟み昨夜から続いた静かな攻防が終わりを告げようとしていた。

セラフィムは純粋の星麗で、その力は強かった。だから今のライトの力では、彼がこの、プリラヴィツェから通じる異空間の神殿に張った結界を破壊することができなかった。

聖具を目の前にして攻めあぐねているライトを見て、魔月将たちは悪知恵を働かせた。

近くをうろついていた子供を人質にとることにしたのだ。するとどうだろう、あっさりとセラフィムは聖具をよこしたではないか。

「やめろ! それはセラフィム様がずっと大事になさってきた大切なものだ! 離せ! くそっ!」

子供はオーガのゴーグの腕の中で暴れた。ライトはそれにはまったく目を向けず、冷淡な表情で聖具を拾い上げた。

そして―。

彼の一睨みで、聖具“虹の錫杖”は粉々に砕け散った…。
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