聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~はじまりの詩~
森は虫たちの気配に満ち満ちていた。
小さな鳴き声から大きな鳴き声まで、実に様々な音域で大合奏となっている。
不思議なのは、これほどの森でありながら、鳥や獣の鳴き声がしないことだ。
それはここが聖域だから? 鳥や獣はもとをたどれば魔月であるから…。
まさか、と即座に否定する。
リュティアはまだ、少年が聖具の番人だなどと認めていない。
番人なら、なぜ、長い間聖具を守ってくれていた巫女姫をひどい方法でさらったりするのだ。
「君はまだ、聖乙女についても、聖具についても、何も知らないのだろう? 仕方ないから僕が教えてあげるよ」
「…けっこうです」
リュティアがつっぱねると、少年はちょっと意外そうな顔をする。
「いいや、君は聞かなければならないよ。どんなに知りたくないと言ってもね。でないとおにーさんのところに案内してあげないけど?」
リュティアはぐっと詰まった。
「わかりました。話していただいても構いません。信じませんけど」
「大人しそうに見えて、君って結構強情だね。まあいいや、単刀直入に言おう。君は…聖乙女とは、人間ではない」
「え…?」
信じないと言ったのに、思わず、リュティアは立ち止まってしまった。
「人間ではないんだ。君は、星麗だ。ちょっと特別な力を与えられた星麗とでも言えばいいかな? 君の癒しの力がまさにその特別な力。けれどほかの力は…たとえば叙情詩をうたうと植物が成長することや、すべての水が君の味方であり、自由に泳げること、星の光を浴びることが無上の喜びであることなどは、星麗の特徴だ。心当たり、あると思うんだけど」
小さな鳴き声から大きな鳴き声まで、実に様々な音域で大合奏となっている。
不思議なのは、これほどの森でありながら、鳥や獣の鳴き声がしないことだ。
それはここが聖域だから? 鳥や獣はもとをたどれば魔月であるから…。
まさか、と即座に否定する。
リュティアはまだ、少年が聖具の番人だなどと認めていない。
番人なら、なぜ、長い間聖具を守ってくれていた巫女姫をひどい方法でさらったりするのだ。
「君はまだ、聖乙女についても、聖具についても、何も知らないのだろう? 仕方ないから僕が教えてあげるよ」
「…けっこうです」
リュティアがつっぱねると、少年はちょっと意外そうな顔をする。
「いいや、君は聞かなければならないよ。どんなに知りたくないと言ってもね。でないとおにーさんのところに案内してあげないけど?」
リュティアはぐっと詰まった。
「わかりました。話していただいても構いません。信じませんけど」
「大人しそうに見えて、君って結構強情だね。まあいいや、単刀直入に言おう。君は…聖乙女とは、人間ではない」
「え…?」
信じないと言ったのに、思わず、リュティアは立ち止まってしまった。
「人間ではないんだ。君は、星麗だ。ちょっと特別な力を与えられた星麗とでも言えばいいかな? 君の癒しの力がまさにその特別な力。けれどほかの力は…たとえば叙情詩をうたうと植物が成長することや、すべての水が君の味方であり、自由に泳げること、星の光を浴びることが無上の喜びであることなどは、星麗の特徴だ。心当たり、あると思うんだけど」