これが、あたしの彼氏です。- 2 -
その後、あたし達は楽しみ過ぎた遊園地を少し名残惜しいと思いながらも後にして、緩い歩調で駅までの道のりを歩いた。
「……あの、矢沢君」
「何?」
「あの、今日。あたし達デートだったんだよね」
「あ?…ああ。そのつもりだけど」
「その。えっと、……楽しかった?あたしと一緒に来て」
「は?いきなり何言うんだ、お前は」
「あ、いや!あたし楽し過ぎて回り見えてなかったなーとちょっと思って」
「…………」
「…全然、デートっぽい雰囲気じゃなかったなって後々気付いて」
あたしがおずおずとした口調でそう言うと、何故か目の前の矢沢君は「ふっ」と小さく笑った。
あたしはそんな矢沢君に当然の如く首を傾げると、未だに少し笑みを含んだ矢沢君が嬉しそうに口角を持ち上げて口を開いた。
「デートっぽい事がしたかったのかよ」
「えっ!?いや、そう言う意味ではなくて、その…」
「ふーん。なら、こう言う事すればちょっとくらいデートっぽくなるんじゃねぇの」
「……え」
「もう、帰り道だけど」
「………っ」
いきなり小声でそう言って来た矢沢君は、不意に空いていたあたしの右手を、そっと優しく握って来た。