これが、あたしの彼氏です。- 2 -
それからの数十分後、意外にも時間というものは早く流れるもので、いつも降りている山本駅の次の駅であたしと矢沢君は降車した。
「………」
どうして山本駅で降りなかったのかと言うと、矢沢君に「話がある」と言われているのに、こっちが身勝手ながらも山本駅で降りると言うのは、どうも失礼過ぎると感じたからだ。
この矢沢君も、山本駅で降りるような素振りは一切見せてくれなかったし。
そんなこんなで、あたしは何故か山本駅の次の駅で降りる羽目となってしまった。
そんな事をひたすら考え込んでいると、不意に矢沢君が「行くぞ」と声を掛けて来て、あたしはまた強引に腕を引っ張られながら歩く事になる。
それから数十分、一生懸命矢沢君の後ろを付いて行くとだんだん大きくて奇麗なマンションが一つ見えてきた。
「…………」
けれど、あたしはそれにちょっぴり嫌な予感を覚える。
まさかだとは思うけど、この大きなマンションは―――――
「あの…、矢沢君、此処って……」
「…俺の家だけど」
「えっ……」
まさに、予感的中だ。