これが、あたしの彼氏です。- 2 -
「…………」
あたしはそんな矢沢君に肩を一瞬ピクリと震わせ、ゆっくりと矢沢君の方へ顔を向ける。
「…そこ、座れよ」
「え、あ…、えっと」
「黒いテーブルの前」
「あ、うん…」
どうしようもない空気に包まれながら、あたしはあごでクイっと場所を指し示す矢沢君に大人しく頷いて黒いテーブルの前にストンと腰を下ろした。
すると黒いテーブルを挟んだ目の前に、矢沢君もそっと腰を下ろす。
「…………」
そこから当然のようにシーンとした沈黙が続く。この静かすぎる空間が、何とも居たたまれない。
矢沢君があたしを呼びとめた理由は分かっている。だからその分、どうしても気まずくなってしまう。
元々あたしがこんな避けるような態度を取ってしまうこと自体、あまり良くない事なんだろうけれど。それでも、今は矢沢君の目をしっかり見れないのが、痛い現実。
今すぐにでも自分の惨めさに項垂れたいあたしが顔を俯けたままでいると、矢沢君が不意に小さく口を開いた。
「………心、」
透き通るような声で呼ばれた、あたしの名前。そんな声に、あたしは余計張り詰めてしまう。