これが、あたしの彼氏です。- 2 -
「…やざわくん…っ」
あたしはそんな伝え方をしてくるどうしようもない矢沢君の背にギュッと手を回した。
「……信じてくれたか」
「……っ」
「俺が今好きなのはお前だ。これでもまだ信じられねえって言うなら―――」
「ううん、信じる…っ、信じるよ…っ」
あたしが目に涙を溜めながらそう言うと、矢沢君は一瞬目を大きく見開いて、本当にどうしようもねえなって顔であたしを今より強い力で抱きしめた。
あたしはそんな矢沢君の体温と高鳴り続ける心臓の音に、一筋の涙が頬を滑り落ちた。
ギュウギュウと抱きしめられ、矢沢君の匂いがあたしの鼻孔をくすぐる。
――――嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、どうにかなってしまいそうだった。
矢沢君が、あたしの事をちゃんと好きだと言ってくれた。
もうそれだけで、今年の幸せを全て使い切ってしまったような気分にさえなってくる。
「……矢沢君…っ、」
あたしが不意に矢沢君の名前を呼ぶと、矢沢君は優しい声で「心、」とあたしの名前を呼び返してくれた。