これが、あたしの彼氏です。- 2 -
「俺に近づくな。気持ち悪い顔して香水臭いんだよ」
ハッキリとした声でそう言った矢沢君に、目の前の美女たちはちょっと不満げな顔をする。
「なっ、気持ち悪いって何よ!」
「もう良いじゃん、行こ行こー」
「ほんと見る目ないんじゃないの!最低!」
怒ったような威勢でそう言い放った美女たちは、ズカズカとした歩調で矢沢君から遠のいて行ってしまった。
………矢沢君、何だか結構酷過ぎる。なんてそんな事を思っていると、あたしはハッと我に返り「矢沢君!」と名前を呼んでそそくさと矢沢君の元まで掛け出した。
すると、不意に溜め息を一つ零した矢沢君がそっとこっちに顔を向ける。
「遅れてごめんなさい。えっと、待った…?」
一応謝りの言葉を述べて矢沢君の前まで辿り着くと、矢沢君は何故かあたしをじっと見つめたまま、ピタリと固まってしまった。
「あ、あのー…、矢沢君?」
「……、お前、何その格好」
「えっ、変だった!?ごめん!……か、帰るとか言わないでぇ」
「は?違う。何言ってんだ、お前」
「……へ?」
変な格好をして来たら即効帰るの矢沢君の一言を思い出してあたしが必死にそう言うと、矢沢君はまた小さく溜め息をひとつ吐き捨てた。