音色
「よくない」

奏だった。

「なっ、何でここにいるのよっ!」

「だって琴音が帰って来ないんだもん」

「そっ、奏には関係ないでしょ!あたし、不破くんと飲みに行くのっ」

「ダメ」

「ダメって、奏には関係ないじゃん」

「関係ある」

そう言うと奏はあたしのことをひょいっと抱えた。

「そーゆーことだから」

不破くんにそう言って奏は歩き出した。

「ちょっと!下ろしてよ!」

「ダメ。下ろさない」

それからどんなに暴れようが喚こうが、奏はあたしのことを下ろしてくれることはなかった。

(なによ、自分はよくてあたしはダメなの?)

そう思うと腹が立つ。
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