音色
それなのに、奏はいつまで経っても帰ってこなかった。

(あたしが、あんなこと言ったから奏はもう嫌になっちゃったのかもしれない)

そう思ったら、胸がチクチクした。


「奏…っ。何でいないの?」


いつも帰ってきたら奏が居てくれた。
だから奏がいないこの部屋がすごくさみしく感じた。
当たり前になりすぎて、あたしは全然気がつかなかった。
泣いても泣いても、奏は帰ってこない。

外で救急車のサイレンの音がした。
あたしはそれを聞いてハッとした。

(奏に何かあったらどうしよう!)

慌てて携帯を握ったけど、あたしは奏の携帯番号を知らなかった。

(あたし、何にも知らないんだ…)

そう思ったらまた涙が出る。
だけど、奏のことが心配で心配で、あたしは部屋を飛び出した。
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