音色
特別な人
あの日以来、何だか奏のことは聞きづらくてうやむやになっていた。



仕事から帰ってくると、なんだか奏は考えこんでいるみたいだった。
最近、奏はそういう時が多い。


「はい!奏にこれあげる」


あたしは開発中のスイーツを奏に渡した。

「ん、ありがと」

奏はそれを受け取るとすぐに開けてパクッと食べた。

「ん‼︎…うまい」

「でしょ?こっちもあるよ!」

あたしは別のスイーツも渡す。

「こっちもうまい!」

「本当に⁉︎アクセントにオレンジの皮入れてみたの!」

「オレンジの香りが絶妙‼︎」

「うれしー‼︎」

あたしがそう笑うと奏は、そんなあたしを見て優しい眼差しを向けた。
それだけなのに、あたしの胸の鼓動が一気に加速する。
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