音色
「だけど、その分琴音のことは泣かせるしかできなかった」

「そんなことないよ‼︎」

「琴音から離れたら忙しい毎日が待ってるから、それなら嫌われた方がいいやって思ったんだ。…それなのにあんなことしてごめん」

「何で奏が謝るの?あたしは後悔とかしてないし、それに十六夜の蒼井奏に振られたなんてかっこいいじゃん!」

「え、振るなんて…」

「あたしもうすぐ27だよ?一回だけの関係なんて普通にあるって!だから奏は悪くないよ」

精一杯明るく言ったはずなのに、それとは反対に涙が出てた。

「琴音。俺ね、琴音の名前を聞いたとき運命だなって思った」

「何で?」

「琴音は、お琴の琴に音って説明してくれたから」

「あ、そういえば…」

「俺、箏弾くしね!直感だけど、そういうことなんだなって思った」

あたしの名前を聞いて、奏はそんな風に感じてくれていたんだ。
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