一般人令嬢は御曹司の婚約者
学校から走って10分。
路地裏の少し奥まった所にバイト先はある。
そこは知る人ぞ知る小さな珈琲店。
ログハウスのような外観が目印。
近くを通ると、引き立てのコーヒーのいい香りが鼻をくすぐる。
「こんにちはー」
「よぉ、今日もよろしくな!」
マスターに元気よく挨拶をしてから、店の奥に入る。
黒エプロンを身に付けて表に出た。
出入口をほうきで掃いて水をまく。
掃除を終えて中に入ると、ふくらはぎの辺りにふわふわした暖かいものが触れた。
「ネコちゃんこんにちは。ごめんね、今は仕事中なの」
ナー。
聞き分けのいい黒猫はあっさりと離れ、その大柄な体躯からは想像もできないジャンプ力でテーブルの上にまるまった。
日当たりのいいそこは彼の特等席だ。
飲食店に動物がいることは、目をつぶる。
店で飼っているマスターの黒猫、名前はネコ。
本人に確かめたわけじゃないけど、マスターも常連客もそう呼んでるから当たりだと思う。
初めて聞いたときはまさかと思ったよ。
だけど、これは事実。
一度聞きそびれ、ずるずる引きずって今に至る。
それで困ることもないけれど。
ちらとマスターを見ると、コーヒー豆を紙の上に並べていた。
粒を揃えて我が子のように扱う。
目が合うとマスターはいい豆だと誇らしげに教えてくれた。
「そうですか」
訳がわからないながらも頷く。
どれも同じに見えて、違いがわからない。
マスターには、凡人には理解できない独特なこだわりがある。
そんなマスターのこだわりのコーヒーは、学生から老人まで幅広い支持を得ている。
下は70円から上は800円を越えるものまで、豊富に取り揃えてあるのが人気の秘訣だろう。
学生は70円のもの、社会人になると300円程度のものをよく注文される。
800円以上のものになると、月に2、3人しかいない。
経営に詳しくなくても、この店の現状はかなりまずいんじゃないかと思う。
でも潰れない不思議。
路地裏の少し奥まった所にバイト先はある。
そこは知る人ぞ知る小さな珈琲店。
ログハウスのような外観が目印。
近くを通ると、引き立てのコーヒーのいい香りが鼻をくすぐる。
「こんにちはー」
「よぉ、今日もよろしくな!」
マスターに元気よく挨拶をしてから、店の奥に入る。
黒エプロンを身に付けて表に出た。
出入口をほうきで掃いて水をまく。
掃除を終えて中に入ると、ふくらはぎの辺りにふわふわした暖かいものが触れた。
「ネコちゃんこんにちは。ごめんね、今は仕事中なの」
ナー。
聞き分けのいい黒猫はあっさりと離れ、その大柄な体躯からは想像もできないジャンプ力でテーブルの上にまるまった。
日当たりのいいそこは彼の特等席だ。
飲食店に動物がいることは、目をつぶる。
店で飼っているマスターの黒猫、名前はネコ。
本人に確かめたわけじゃないけど、マスターも常連客もそう呼んでるから当たりだと思う。
初めて聞いたときはまさかと思ったよ。
だけど、これは事実。
一度聞きそびれ、ずるずる引きずって今に至る。
それで困ることもないけれど。
ちらとマスターを見ると、コーヒー豆を紙の上に並べていた。
粒を揃えて我が子のように扱う。
目が合うとマスターはいい豆だと誇らしげに教えてくれた。
「そうですか」
訳がわからないながらも頷く。
どれも同じに見えて、違いがわからない。
マスターには、凡人には理解できない独特なこだわりがある。
そんなマスターのこだわりのコーヒーは、学生から老人まで幅広い支持を得ている。
下は70円から上は800円を越えるものまで、豊富に取り揃えてあるのが人気の秘訣だろう。
学生は70円のもの、社会人になると300円程度のものをよく注文される。
800円以上のものになると、月に2、3人しかいない。
経営に詳しくなくても、この店の現状はかなりまずいんじゃないかと思う。
でも潰れない不思議。