一般人令嬢は御曹司の婚約者
中心で一番しゃべってた女生徒だ。

「…………」

「…………」

しかし、何も起こらない。

「……………え、なに、どうしたのよ!?」

代わりに天花寺さんが応えた。

「あれは君の家の者か。ここは、許可のない者は立ち入り禁止のはずだが」

「どうして……」

「見たところ、無許可らしいな。このことが学校側に知られればどうなるか……」

無感情に話を続ける天花寺さんの声が切れると、うめき声が聞こえた。

「……ぅ、お嬢様、申し訳、ございません………」

「…………くそっ」

唇をかんで、悔しそうな顔をしたが、すぐに強気なものに戻る。

「いいこと、祝前麻里奈。今回は見逃してあげるけど、次はないわ! それまでに婚約破棄しておくことね。行くわよ!」

まさに、負け犬の遠吠え。
団体がぞろぞろと校舎に引き下がっていった。
姿が見えなくなってから、ようやく力が抜ける。

「はぁ……」

「大事無いか」

私以外の声が聞こえて、思い出す。
ここには私ひとりじゃない。
慌てて背筋を伸ばした。

「そんな気負う必要はない。楽にしろ」

「は、はぁ……」

楽にしろ、なんて言われても……。
落ち着きなく視線を動かしていると、天花寺さんが隣に座る。
この人、ここに居座る気だ。

「では、わたくしはこれで……」

逃げようとしたが、手首をつかまれ失敗に終わる。

「今は丁度ふたりだけだ。少し、話しをしよう」

そう言って、地面にハンカチを広げられれば、断るわけにはいかない。
私はハンカチの上に腰をおろした。
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