一般人令嬢は御曹司の婚約者
電話の向こうが騒がしくなる。
『ごめんね、もう仕事に戻らなきゃならなくなった』
「いいえ。お仕事、頑張ってください」
『うん。………今のセリフ、夫婦みたいだね』
「親子の会話です!」
『はははっ』
笑い声をあげながら、マスターとの通話は切れた。
これがさっきまでマスターと繋がってたんだ。
手の中にあるケータイを少し寂しい気持ちで見ていたが。
いけない、これは借り物だ。
「これ、ありがとうございました」
「いや。………いい表情をしている」
「え?」
「なんでもない」
天花寺さんの手に渡ったケータイは、初めに入れていたポケットにしまわれた。
はぐらかされた気もしたけど、まぁいっか。
溜め込んでいたものを吐き出して気分スッキリ。
御曹司が大好きっていうのは気に食わないけど。
私がもう一度口を開こうとした時、天花寺さんは別のところを見ている。
彼女の視線の先を追うと、御曹司がいた。
いつの間に……。
「お前、俺のメイドに何してるんだ!」
「何もしていない。ただ話していただけだ」
「うそつけ!」
「本当です。天花寺さんとは、学校が同じで、懐かしいねって……」
とっさに割り込んだけど、後に続ける言葉が見つからない。
「そういうことだ」
天花寺さんがすかさずフォローを入れてくれる。
「草薙隆雄が気にすることは何も無い。それとも君は、ガールズトークに入りたかったのかい?」
「いや、なにもなかったならいい」
さすがの御曹司もガールズトークは避けるらしい。
「ほら、いくぞ。もう昼だ。腹減った」
ずんずん歩み寄ってきた御曹司に強引に手を引かれ、天花寺さんと引き離される。
「ちょ、まっ……!」
振り返ると、天花寺さんは手を振ってくれた。
助けてはくれないんですね。
『ごめんね、もう仕事に戻らなきゃならなくなった』
「いいえ。お仕事、頑張ってください」
『うん。………今のセリフ、夫婦みたいだね』
「親子の会話です!」
『はははっ』
笑い声をあげながら、マスターとの通話は切れた。
これがさっきまでマスターと繋がってたんだ。
手の中にあるケータイを少し寂しい気持ちで見ていたが。
いけない、これは借り物だ。
「これ、ありがとうございました」
「いや。………いい表情をしている」
「え?」
「なんでもない」
天花寺さんの手に渡ったケータイは、初めに入れていたポケットにしまわれた。
はぐらかされた気もしたけど、まぁいっか。
溜め込んでいたものを吐き出して気分スッキリ。
御曹司が大好きっていうのは気に食わないけど。
私がもう一度口を開こうとした時、天花寺さんは別のところを見ている。
彼女の視線の先を追うと、御曹司がいた。
いつの間に……。
「お前、俺のメイドに何してるんだ!」
「何もしていない。ただ話していただけだ」
「うそつけ!」
「本当です。天花寺さんとは、学校が同じで、懐かしいねって……」
とっさに割り込んだけど、後に続ける言葉が見つからない。
「そういうことだ」
天花寺さんがすかさずフォローを入れてくれる。
「草薙隆雄が気にすることは何も無い。それとも君は、ガールズトークに入りたかったのかい?」
「いや、なにもなかったならいい」
さすがの御曹司もガールズトークは避けるらしい。
「ほら、いくぞ。もう昼だ。腹減った」
ずんずん歩み寄ってきた御曹司に強引に手を引かれ、天花寺さんと引き離される。
「ちょ、まっ……!」
振り返ると、天花寺さんは手を振ってくれた。
助けてはくれないんですね。