クラッシュ・ラブ

同期×担当×新人



催しも後半を過ぎ、『ご歓談ください』的な時間が続いていた。

わいわいと賑やかにしている中で、どう考えてもオレだけ浮いてる気がする。
顔を知ってる同業者はもちろん数人いるけど、こっちから肩を叩いてまで挨拶しようと言う気になれない。

こんな自分だから、いつまで経っても『友達』なんて出来ないんだろう。
まぁ、それも仕方ない。

全く危機感もなく、楽天的に考えるオレに、一人の人物が近づいてきた。


「どうも。お久しぶりです、春野センセ」


ずいぶん長いこと手にしていたグラスから、顔を上げると知ってる顔だ。


「いつぶりかなぁ? 春野センセ、こういう場には必ずと言っていいほど来ないし。編集部もそんなに足を運ばないデショ?」


親しげに話し掛けてきた、この短髪の男は外崎(とざき)リョウ。その名はペンネームで、本名は知らない。
歳は確か自分よりもちょっと上で、だけど、デビュー年が一緒ってことで、同期みたいな位置づけである関係。


「最近、投票結果も安定して、いーカンジなんだって? サスガ」


そしてたぶん、オレのことをあんまり良く思ってないと思われる。
だからって、別になにされるわけでもないし、普段会うことも話すこともないからなんの弊害も起きないけど。


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