クラッシュ・ラブ
「……別に。外崎さんだって同じでしょう」
「『同じ』、ねぇ。いや、俺はまだまだ。現に、春野センセを越えられないでいる」
オレと肩を並べて、会場を見るようにしながら外崎さんは言う。
正直、同職同士で“勝った負けた”とか、そういう考えは持ち合わせてなくて。ただ、毎回読者投票と言う名のランキングで結果が出れば、“勝った”とかって喜ぶんじゃなくて。
『読んでくれてる』『楽しんでくれてる』。
それが一番うれしいし、糧になる。
「どうしたらいいのか、ご教授願いたいところ」
「……ただ、思うようにやってるだけだから」
「あ。二人でいたのか!」
外崎さんの執拗な視線を受け、淡々と答えていると、澤井さんがオレたちの元に合流した。
「二人が並んでる姿なんて、見たことあったかなー」
「あ! そうか。澤井さんが春野センセをココに引っ張ってきたんですね?」
「ご明答。だって、“社会勉強”の場にもいいかと思って」
「そんな、要らないんじゃないですかぁ? 春野センセに限って」
棘のある言い方には、澤井さんも当然気付いてる。
でも、澤井さんも、もちろんオレも。それをわざわざ取り上げて、外崎さんになにかを言おうだなんて思ってない。
別に間違ってないと思う。
どんな人間にも、肯定派と否定派がいるだろうし、世界中の人に愛されるだなんて、所轄無理な話だ。
そうだな……ひとつだけ、綺麗事をいうなら。
自分が好きな人には、好いていてもらいたい。それが叶うなら、自分を見失うことなんか、ない気がするから。
澤井さんと外崎さんが話をしているのを、ただBGМのように聞き流していると、突然別の音がオレの耳に割って入ってきた。