クラッシュ・ラブ
増えてく気持ち
*
あのとき外したメガネをして、雪生は部屋に籠もってる。
スーツとネクタイを仕舞いながら、彼とのキスを思い出したことは、内緒。
ピーッと炊飯器が知らせてくれた音と同じタイミングで、お味噌汁も出来た。
「……よし」
あ。今の言い方、なんか雪生っぽい。
そんな小さなことを自分で発見しては、はにかんだ。
「あのー……ゴハンが」
ノックをして、仕事部屋に話し掛ける。
締切前のことしかわたしは知らなかった。どうやら、カズくんたちが来るまでのお仕事は、リビングじゃなくて、この寝室の隣の部屋でやるらしい。
うんともすんとも言わないドアの前で待っていると、なんのアクションもないまま、急にガチャリとドアが開いた。
「わっ」
「あ、ゴメン」
ビビりすぎるわたしもどうかと思う。
でも、さっきのことがあっての今だから、仕方ないよね。あんなふうに触れられたのなんて、遠い昔の記憶にしかないし、好きな人が出来たこと自体久しぶりだから――ふわふわした状態でいても、当然だ。
いちいちうるさい心臓を片手で抑え、ちらりと目を合わせる。だけど、つい、恥ずかしさが出て来て顔を逸らしてしまう。
ああ、あからさますぎる! 自分!
わかりやす過ぎる自分の行動に、さらに羞恥心が増し。
まともに顔を上げられないまま、「すみません」と口にするのが精いっぱいだった。
お互いに廊下に立ったままでいると、ポンポン、と優しい重みを頭に感じる。
ふ、とその手の魔法で顔が上を向く。すると、少し申し訳なさそうな表情の雪生がいた。
あのとき外したメガネをして、雪生は部屋に籠もってる。
スーツとネクタイを仕舞いながら、彼とのキスを思い出したことは、内緒。
ピーッと炊飯器が知らせてくれた音と同じタイミングで、お味噌汁も出来た。
「……よし」
あ。今の言い方、なんか雪生っぽい。
そんな小さなことを自分で発見しては、はにかんだ。
「あのー……ゴハンが」
ノックをして、仕事部屋に話し掛ける。
締切前のことしかわたしは知らなかった。どうやら、カズくんたちが来るまでのお仕事は、リビングじゃなくて、この寝室の隣の部屋でやるらしい。
うんともすんとも言わないドアの前で待っていると、なんのアクションもないまま、急にガチャリとドアが開いた。
「わっ」
「あ、ゴメン」
ビビりすぎるわたしもどうかと思う。
でも、さっきのことがあっての今だから、仕方ないよね。あんなふうに触れられたのなんて、遠い昔の記憶にしかないし、好きな人が出来たこと自体久しぶりだから――ふわふわした状態でいても、当然だ。
いちいちうるさい心臓を片手で抑え、ちらりと目を合わせる。だけど、つい、恥ずかしさが出て来て顔を逸らしてしまう。
ああ、あからさますぎる! 自分!
わかりやす過ぎる自分の行動に、さらに羞恥心が増し。
まともに顔を上げられないまま、「すみません」と口にするのが精いっぱいだった。
お互いに廊下に立ったままでいると、ポンポン、と優しい重みを頭に感じる。
ふ、とその手の魔法で顔が上を向く。すると、少し申し訳なさそうな表情の雪生がいた。