クラッシュ・ラブ

この緊張が気付かれませんように。

そんな思いで、必死に声が震えないように答える。


「『なんの取り柄もない』?」
「……ふとしたときに――――いつも、思ってることですから」


コレと言って秀でたものもなくって、強い信念を持ち合わせてるわけでもない。
“オリジナリティ”のない、その他大勢に属するような……エキストラみたいな人生かもしれない。

けれど、確かにわたしはわたしが主役であるはずなのに。

弟がいるから。
両親が忙しいから。
友達が多くないのも、わたしがつまんないから
すぐに振られるのも、わたしに魅力がないから。

いつしかそんなふうに卑下する自分に嫌気がさした。それでも、カンタンに変えられなくて。
本当はわかってる。どれも理由をこじつけては、責任転嫁してるだけだって。

なのに、わたしは、誰かの役に立ててることに依存して、根本的になんの解決も成長もしないまま――。


「それ、本気で言ってるの?」


低い声だけど、いつもとは種類の違う声色。
――怒ってる? あまりに卑屈だから、愛想つかされたかもしれない。

でも、自分を偽れるほど、器用じゃないし――……。


「……わかった」


そう言った雪生の手が、わたしから離れて行った。
その離れた手が、なんだか雪生の心も離れたのだと示されているようで、一気に熱が冷める。
そして、視線を落とし、ゆっくりと目を閉じた。

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