クラッシュ・ラブ
「じゃあ、オレが見つけてくから」
「…………え?」
ひとつに纏めていたシュシュを、するりと外されて目を開ける。
ハラリと広がる、胸までの長い髪を、手櫛で丁寧に梳かすように上から下へと滑らせる。
毛先を目指すように、ゆっくりと。
その間に、雪生はぽつりぽつりと話し出す。
「――仕事が丁寧。いい意味で主張し過ぎなくて、想いやりがある」
……え? それ、って……わたしのこと……だよね?
髪に触れられている箇所も気になりつつ、雪生の言葉にも動揺する。
ススス、と雪生の指が、肩のあたりまで降りてきた頃にはこう言った。
「一から十まで口にしなくても、その先を察するチカラもある」
「ええっ……??」
それは一体どういうこと? なんのときのことを言ってくれてるんだろう?
全くピンとこないわたしは、思わず声を上げ、雪生を見た。
雪生は、表情を変えることなく、その理由を説明する。
「オレが具合悪そうとか、生姜好きそうとか。薬を敬遠していたワケとか、ね」
え? あ、あぁ……そう言われれば、そうかもしれないけど……。でも。
戸惑っている間に、雪生の手が、スルン、とわたしの髪を通り抜け終わった。
毛先が僅かに揺れ動き、元の位置におさまろうかとしたとき――。
「あと、照れたカオが可愛い」