クラッシュ・ラブ

「じゃあ、オレが見つけてくから」
「…………え?」


ひとつに纏めていたシュシュを、するりと外されて目を開ける。
ハラリと広がる、胸までの長い髪を、手櫛で丁寧に梳かすように上から下へと滑らせる。
毛先を目指すように、ゆっくりと。

その間に、雪生はぽつりぽつりと話し出す。


「――仕事が丁寧。いい意味で主張し過ぎなくて、想いやりがある」


……え? それ、って……わたしのこと……だよね?


髪に触れられている箇所も気になりつつ、雪生の言葉にも動揺する。
ススス、と雪生の指が、肩のあたりまで降りてきた頃にはこう言った。


「一から十まで口にしなくても、その先を察するチカラもある」
「ええっ……??」


それは一体どういうこと? なんのときのことを言ってくれてるんだろう?


全くピンとこないわたしは、思わず声を上げ、雪生を見た。
雪生は、表情を変えることなく、その理由を説明する。


「オレが具合悪そうとか、生姜好きそうとか。薬を敬遠していたワケとか、ね」


え? あ、あぁ……そう言われれば、そうかもしれないけど……。でも。

戸惑っている間に、雪生の手が、スルン、とわたしの髪を通り抜け終わった。
毛先が僅かに揺れ動き、元の位置におさまろうかとしたとき――。


「あと、照れたカオが可愛い」


< 140 / 291 >

この作品をシェア

pagetop