クラッシュ・ラブ
流暢に話をしていたカズが、オレたちの重い雰囲気に気付いて語尾を緩めた。
きっと、第三者から見れば。オレだけがいきり立ってなにか面白くない顔をして、反対に、澤井さんは本当に関係してるのかと言うほど涼しい顔をしてるんだろう。
「そういう仕事(コト)じゃなさそーっスね……今のおれの役割は」
カズは若いわりに察しがいい。
それは普段から感じていたことで、仕事の流れとか、今して欲しいことや言葉でうまく伝えられないニュアンスのものとか。そういうのを汲み取ってくれるのが、抜群にイイ。
仕事上はもちろん、ふとしたときの会話のテンポとか、雰囲気に合わせて言葉数を増減させたり。
要は、“カン”がいいんだと思う。
「勘がイイのは仕事だけじゃないな、和真くんは。それとタイミングもイイ。モテる条件持ってんなぁ」
「えっ……そ、そんな褒められても。おれ、なんにもできませんよ? それに、全然持モテないし」
「そう思ってんのは自分だけ、っつーアレじゃないの? 和真くんも、ユキも」
「ユキも」と、あえて付け足したオレの名前に、カズの視線を感じた。
……別に、オレはモテてるとか思ったことないし。今回のあのコの件だって、珍しい事件だったくらいで。
それより! 話の本題をズラされるとこだった。
「話、戻すけど! 澤井さんが余計なこと言ったから、彼女、今も外崎のとこに――!!」
「『彼女』??」
熱くなってんのはオレだけで。澤井さんは完全にいつも通り冷静だし、カズは状況を全く知らないわけだから、間の抜けた声で聞き返すのも無理はない。
カズの聞き返しに言葉を止めはしたが、一から説明するまでの余裕はなく。
すると、要約して澤井さんが説明をすると、カズの顔が“驚”というものに変わるのが目に見えてわかる。
しかし、さすが編集してる澤井さんは、物事を簡潔にまとめ上げるのがウマイな……なんて感心してる場合じゃない。