クラッシュ・ラブ
……そうだ。だって、あの杏里ちゃんですら、雪生にペンを持つことを断られたくらいなんだから。
本当に意味ないんだよ、こんなことしたって。
「……本当、バカですね」
コロッとペンをテーブルに置き、力なく失笑する。
前に自分で思ったことのあることじゃない。一朝一夕で出来るような仕事じゃない、って。
それでも――――。それでも、どうしてもなにかをしてみたかった。無意味なことも、意味のあるように思える気がして。
「だって、あのコ……杏里ちゃんですら、ペン入れさせてもらえなかったんです。そういえば。わたしがこんなことしたって、本当“バカみたい”……」
俯いて、独り言のように言う。それを受けても、外崎さんはなにも言わず、動かずにいた。
ややしばらく沈黙が続き、そしてそれを破ったのは、彼のほう。
「……それはそうだろうな」
心のどこかで、『そんなことない』って否定して欲しかったんだと思う。
けれど、彼はバッサリとその期待を切って捨て、現実を突きつける言葉を口にした。
……わかってる。今、仮にそういう優しさを見せられたところで、ただの気休めにしかならないってことくらい。
それでもやっぱり悲しい気持ちでいたわたしは、きゅっと唇を噛んだ。
すると、外崎さんは淡々と言葉を重ねる。