クラッシュ・ラブ
今日のご希望の夕食はピラフだった。
嗜好の方向性がイマイチ掴めないけど、ユキセンセがもくもくと口を動かしながらパソコンに向かうところを見ると、口に合ったらしいのがわかってほっとする。
食べ終わったものを片付け終わる頃も、センセは変わらず目や手を動かしていた。
……あれ。今日はまだ寝ないのかな? 昨日のこの時間はとっくに寝室に籠ってたのに。
なんか、昨日よりもみんな、集中力が増してるような……?
ふと、掛け時計を見てそんな疑問が湧く。
やっぱり、一日二日じゃ生活スタイルとか諸々がわかるわけもない。
追い込まれてる雰囲気に水を差すことが出来ずに、わたしはそのまま様子を窺いながら細々と自分の出来うることをしていた。
「あれ。なんかいーにおい」
ふと、カズくんが顔を上げて呟いた。
それに反応したヨシさんも手を止めて、鼻に意識を向けて言った。
「お。ほんとだ」
そうして二人が同時にキッチンのわたしを見る。
「なに作ってんの?」
「なに作ってんの?」
わ。言葉被ってる。面白い。
二人が顔を上げてから同じ言葉を発するまで、まるでシンクロしたようだったから、つい笑ってしまう。
「あ、すみません。簡単なおやつ……今朝来たときに、甘いお菓子を食べてたみたいだったから。どうかなぁ……と」
『要らない』と思われたらどうしよう、と、びくびくとしながら答えると、二人は目を見合わせてからわたしに満面の笑みをくれた。
「これ! これだよー!」
「ですよね! こういうことッスよねっ」
……え? なにが?
ヨシさんがカズくんを指さして興奮気味に言うと、カズくんは腕を組んで、ウンウンと頷きながらそう言った。