クラッシュ・ラブ
「……ごめん」
吐息が掛かる距離で、ひとこと雪生が発した。
落ち着き、見上げると、目の前には困ったような顔をした雪生。きっと、その困り顔は、“こういうときにどうしていいのか”っていう類だとわたしは思った。
「すぐ……周り見えなくなっちゃって。でも」
叱られた子どものように、俯きながらぽつぽつと喋る。そして、ふっと視線を戻すと、それからは目を逸らさずに。
「そうなるくらい、好きだから」
直球の告白って、何度されてもドキドキとしてしまう。
いや、相手が雪生だからかもしれない。
かぁっ、と顔が赤くなるのが自分でもわかる。
恥ずかしい。でも、それ以上に嬉しい。こういう気持ちを、ちゃんと今伝えなきゃだめだ。
「わ……たし、も……冷静になれなくなるほど、好き」
勇気を振り絞って口にした告白。
直後に、ものすごいことを言ったかも、とさらに顔を赤くした。
それなのに、雪生からはなんの反応もなくて。俯き顔で、視線だけをちらっと上に向けると、彼は固まったまま。
あ、あれ??! そんなにヒドイ告白だったかな? リアルにあんなこと言う女の子なんていない??
言ったことは取り消せないし、巻き戻すことも出来ない。
沈黙が余計に脳内を掻き乱す。
すると、また、わたしに覆いかぶさるように、ガバッと雪生が抱きしめる。
「そんなふうに言われたら……ヤバイんだけど」
なんだか息苦しそうな声で、額をわたしの肩に乗せたまま言う。今までと違う声色に、少し心配になって雪生の頭に手を乗せる。
「雪生……? どっか具合悪い?」
柔らかい髪に触れながら聞くと、一拍置いてから、わたしの肩が軽くなった。
ゆっくりと、顔を上げる途中の雪生と目が合う。その目は、“怖い”とかではないんだけど、どこか鋭い目つきで――。