クラッシュ・ラブ
「知ってるんでしょ? 私はさっきミキから聞いたんだけど。でも今思ったけど、案外ユキセンセの姉とか妹とかじゃ――」
メグはきっと、わたしに深刻にならないようにそう付け足してくれたんだと思う。
でも、カズくんの反応はそうじゃなかった。
「……アキさんは、ユキセンセの――――」
「待って!!」
核心にせまる寸前、わたしは思わず声を上げた。言葉を中断させられたカズくんは、目を丸くしてこっちを見てる。
「ご、ごめんね……。メグもカズくんも。だけど、人から聞いて悶々として勝手な偶像作るより、やっぱり本人に正直に聞いた方がいい気がして」
わたしの言い分を二人は黙って聞いてくれてた。
「って、元はと言えば、ぐちぐちとわたしがメグに言ってたから悪いんだよね。うん」
「ミキ……」
「うん。だから、今から行ってみる」
テーブルの上で、ぎゅ、っと自分の手を包むように握り、笑顔で顔を上げた。
「……そっか。そうだよね」
「ごめんね、メグ。ありがとう」
「ううん。でも、どうせ、“そんなことだったの”なんてことだと思うけどね!」
最後まで明るく、手をひらひらとさせながら背中を押してくれるメグ。その支えがすごく力強くて頼もしい。
「カズくんも。わざわざ来てもらったのに、ごめんなさい」
「いや。おれは大丈夫だけど」
「でしょうね! 一日中、陽の目も見れない漫画描いてるだけだろーし!」
「恵! てめぇ……」
初めて二人が並んだのを見たけど。メグからいつも聞いてたような、想像通りの二人の関係に笑みがこぼれる。
そして、その二人に力を分けて貰えた気がする。
「二人とも、ありがとう! 行ってきます!」
二人に見送られながら、わたしは店をあとにした。