クラッシュ・ラブ
「……全部、知ってるから――アキは。昔のオレも、今のオレも。アキが言ってた過去の恋人なんて、美希だって面白くないでしょ。だから」
「でも……でも、“知りたい”っていう気持ちの方が……大きいです」
「オレは、逆の立場なら冷静でいられない」
「――わたしだって!」
わたしだって、同じ。アキさんの言葉に小さく何度か傷ついた。
でも、それを責めるのは違うと思ったし、それでもちゃんと、雪生という人を受け止めたかった。
前までの自分なら、両耳塞いで、目も閉じて。それで、なんにもなかったフリをするように、ごまかして取り繕っていたと思う。
だけど――。
「――雪生が、わたしを変えてくれたから」
わたしの中の常識や、概念。今までの自分のちっぽけなプライドや、弱さまでも。
全部、壊していったから。
「さっきの……アキさんの。雪生が、『彼女を次々と』って話聞いたら、やっぱり複雑だったけど……」
それは正直な気持ち。
雪生のことが好きなんだから、隠せない、どうしようもない嫉妬心。
「でも、“そう”なってしまった雪生には、ちゃんと理由があったってわかったし」
ずっと繋いでいた手を、今度はわたしから握り返す。そして、真っ直ぐと見上げて、雪生の目を見て言った。
「――その続き。ここにいる雪生に繋がった、続き(理由)が知りたい」
それを全部、受け止められる気がする。今のわたしなら――。