クラッシュ・ラブ
……けど、結局雪生が『話したくない』と言ってしまえばそれまで。
どんな反応が返ってくるの……?
「……アキが居たから、ここへ辿り着いた」
静かな口調で答える雪生は、さっきのアキさんと同じように、少し遠くを見つめていた。
「オレが壊れてたとき……何気なくなんだろうけど、言ったんだ。『雪生は人の気持ちがわかる人間なんだから、そんなことしてないで他に目を向けたら』ってね」
そういう言葉は、挫折しかけてる人に対して、上辺だけの言葉として言ったりも出来る。
当時、“壊れていた”と言う雪生に、そんな綺麗事だけを言ったって変わらなかったんじゃないかと思う――――“日常的に”近くにいた人間の言葉じゃなければ。
「……アキは、歳もいっこしか違わないから、共感出来ることが多かった」
そう語る雪生を見て思う。これは直感だ。
おそらく、共感からの特別な感情が、ほんの少しでもあったたはず、と。
「だからさ。親以上にオレのこと知ってて。
『絵ウマイんだから、それ活かして、誰かに伝えたり訴えかけたり出来ることしてみたら? 実際に感情表現出来ないっていうんなら、そういう手段を考えなよ!』
なんて、きっと軽いノリで発言したんだよね、アイツは」
……だから。だから、「自分のおかげで、今の雪生がある」ってことなんだ。
納得しつつ、それほどまでに深い関係のアキさんという存在が重くのしかかる。
本当は、雪生の隣にはずっと彼女が居て。そして本来、その姿が望ましかったのかもしれない。二人はそういう関係にならなくてもいいのかな……?
「けど、それにまんまと乗せられたオレも、まだガキだったし軽かったのかな。考えが」
失笑しながら言うと、今度は俯いてしまった。