クラッシュ・ラブ
――目は逸らさない。大丈夫。どんな答えを聞いても、わたしの気持ちは変わらない。
「お姉さんか、なにか……?」
そう。壊れるべくは、わたしの中の、秋生さんへの恐怖心――。
一世一代の言葉に気付いたように、雪生は真面目な顔で口を開いた。
「……ああ、本当にゴメン。そんな顔をさせて」
雪生の手は、定期をすり抜けわたしの顔に触れる。頬に添えられた雪生の手に、わたしは自分の手を重ねる。
「……アキは、小さいころから――いや、正確には、産まれたときから隣にいる、いわゆる“幼なじみ”」
「そんな……昔から……」
姉弟というセンが完全に消えた。むしろ、この世に生を受けたときから隣に並んでいたという、知らないことなんかないくらいの濃く、深い付き合いなんだ。
過去のことにまで嫉妬したって意味ないじゃない。そんなの、滑稽すぎる。
そうもう一人の自分は言うけれど、わたし自身がまだそれに耳を貸す余裕がなくて。
「親同士が仲良くて……オレの名前なんて、アキの二番煎じみたいなモンらしいし。アキは秋に産まれてるから」
「……そう」
「美希?」
こういう醜い心は、いつになったらなくなるんだろう。
両想いになっても、その手がわたしに触れていても。それでもわたしはあなたの過去まで欲するなんて、どこまで愚かな女なの……。
自己嫌悪に陥って、あれだけ気をつけていたのに雪生を真っ直ぐと見られなくなってしまった。
その様子をすぐに察知した雪生が、頬から顎へと手を移動させてクイッと顔を持ち上げる。