クラッシュ・ラブ
ぎこちないキスは、顔から火が出そうになるくらいに勇気を出したもの。だけど、その『恥ずかしい』という気持ちよりも、雪生にキスをしたかった気持ちの方が勝った瞬間。
不意打ちをくらった雪生は、目を丸くしたあとに口を押さえて頬を薄らと赤らめた。
その手を今度はメガネに移動させると、ゆっくりメガネを外してしまう。
目の前になにも遮るものがなくなった彼は、ゆらりとわたしに影を落とす。
「――今、“わたしも愛してる”って聞こえた」
臆面もなくそんなセリフを吐いて捨てると、顔を両手で包まれる。
そして、わたしの好きな彼の指がまた新たに零れそうな涙を掬い取ると、そこにそっとくちづけた。
その拍子に目を閉じ、再び瞼をあけた瞬間。
甘く蕩けるキスが、わたしを待っていた。
「……ん」
わたしなんかよりもずっと官能的なキス。
でも、案外短めにそのキスに終止符を打たれると、名残惜しい気持ちになる。
「……そういうカオ、しちゃだめ」
困ったように笑いながら、チュッとリップ音付きのおまけのキスがやってきて。
「そういうカオ」ってどんなんだろう、なんて、自分の両頬を抑えながら熱を冷まそうとする。
「……いや。してもいいんだけどね。でも、今は待って? 話の途中でも押し倒したくなるから」
「え? え?!」
「あー……それにしても、実際に口にするとなると緊張するね、やっぱ」
わざとおどけるような顔と声で言うと、ポンポンとわたしの頭にまた手を乗せる。
こっそりと前髪の隙間から、雪生を仰ぎ見るとさっきよりも心なしか顔が赤い気がしてなんだかくすぐったい。
……今の告白。一所懸命に言ってくれたんだ。
じんわりと胸に温かさが滲み、広がる。