クラッシュ・ラブ
「あの! ……すみません、なんか……色々勝手に勘ぐってました。……嫉妬もしてました。でも、そういう思いよりも、“この感情”を大事にします」
きゅ、と自分の胸元を掴んで言った。
強がりとか、建前とか、そういうんじゃなく。本当に心から。
だって、こんなに幸せな時間が目の前にあるのに、他のことに気を取られるなんてもったいなさすぎる。
「……『嫉妬』、してくれたの?」
「……そりゃあ、しますよ。わたしだって」
「…………そっか」
……あれ? なんか、予想外な――そのうれしそうな顔はなに?
宙を見つめ、なにか考えてる雪生を、首を傾げて見つめる。その視線にハッとした雪生が、
眉を下げて苦笑した。
「あー……。今、悪いこと考えてた。ゴメン」
「えっ……! な、なんですか、それ……」
聞き返すと、頬をポリポリと掻きながら――。
「いや……アキのこと。黙ってたらまた、妬いてくれるのかなー、って。少しだけ」
唖然としてしまった。
子どもの悪知恵というか、イタズラ心というか。
だけど、そんな考えに湧きあがるのは、怒りとか悲しみとかそういうんじゃなくて。そんな、わたしの小さな嫉妬心に執着した雪生に対しての、愛情っていうんだからわたしも相当ヘンだ、きっと。
「ゴメン。ちょっと頭を過っただけ」
「そんなの。秋生さんじゃなくても、これからいっぱいするかもしれません……やきもち」
ぽそっと言うと、今度は頭をくしゃくしゃっと、少し乱暴に撫でられて。
「――いいよ。だって、オレに興味なかったらそういう気持ちになんないもんね?」
――優しい目。
寝癖で、少しヒゲが伸びてて。決して綺麗とは言えない格好で。
それでもやっぱり、全部が良くみえてしまうわたしは、興味があるどころか雪生しか見えてなさそうだ。
「なんて。これ以上そんなこと言ってたら、本当に愛想尽かされちゃうからやめた」