クラッシュ・ラブ


「……脱稿」


昼前に、ユキセンセが十数枚の原稿用紙をトンッと机で揃えて言った。


「あー。今回もお疲れ様ッス」
「ねみー」


その言葉と音が合図だったかのように、二人はそう言って机に突っ伏した。

結局、わたしは朝方ソファでうとうととして、3人はあのまま今まで根詰めて作業をしていたらしくて。
だから、わたしは大丈夫だけど、リビングの3人は疲弊しきってる様子。


「……お疲れさま、でした」


こんなときは、なんて言っていいのかわからなくて。
結局普通の言葉をぽつりと口にする。


「センセ……今回も寝てっていーッスか……」
「俺も……寝ます」


カズくんとヨシさんはふらりと椅子から立つと、半開きの目でよろよろと別室へと入って行った。

二人の丸まった背中を見送った後、未だにリビングにいるユキセンセを見た。
原稿を梱包し終え、メガネを取って天井を仰いでる。


あ。止まってる……。放心してるのかな? 相当疲れるよね、こんなふうな仕事なら。


だけど、あまりにも動かなくて。
心配になったわたしは、そっと横から近づいて、声を掛ける。


「せ……センセ……?」

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