クラッシュ・ラブ
背中越しの熱
*
疑似デートのような体験をしても、なにもかわらない日を過ごしていた。
当然なんだけど。あれはデートでもなんでもなく、仕事の付き合いだったわけだから。
それなのに、この数日間、時間があれば、なぜか思い返してしまうのは彼の存在だった。
メグにも誰にも言ってないけど……正直言うと、また、あの仕事場に行くのが待ち遠しいような気持ちだった。
その理由は、単純に、自分もなにか役立っていると感じられる場所だったからだ、と、納得させて。
そうして迎えた2度目の仕事の日。
前回よりは、気持ちも落ち着いてあのマンションに辿り着いた。
共同玄関の前で、カズくんからのメールをもう一度確認する。
【8月○日、お昼くらいからお願いしたいとのことでしたー】。
日にち、間違ってないよね。時間も具体的じゃないけど、今11時だし。お昼ご飯のこと考えたら、問題ないよね。
考えたら、わたしとユキセンセは連絡先を交換すらしてない。
だから、カズくんがこうして出動内容メールをくれる。とりあえずそれでどうにかなってるし、自分からセンセに連絡先なんて聞けないし。
ピンポーン、と無機質な音が響く。その音が消え入りそうな瞬間、スピーカーが繋がった。
『……』
そうそう。このちょっとの間のあとに、センセはいつも「はい」と言うみたいなんだよね。
『……ごほっ……はい』
「え。えぇと……向井です」
『…………けほっ』
咳と同時に大きな自動ドアが開いた。そこを潜り抜けながら考える。
疑似デートのような体験をしても、なにもかわらない日を過ごしていた。
当然なんだけど。あれはデートでもなんでもなく、仕事の付き合いだったわけだから。
それなのに、この数日間、時間があれば、なぜか思い返してしまうのは彼の存在だった。
メグにも誰にも言ってないけど……正直言うと、また、あの仕事場に行くのが待ち遠しいような気持ちだった。
その理由は、単純に、自分もなにか役立っていると感じられる場所だったからだ、と、納得させて。
そうして迎えた2度目の仕事の日。
前回よりは、気持ちも落ち着いてあのマンションに辿り着いた。
共同玄関の前で、カズくんからのメールをもう一度確認する。
【8月○日、お昼くらいからお願いしたいとのことでしたー】。
日にち、間違ってないよね。時間も具体的じゃないけど、今11時だし。お昼ご飯のこと考えたら、問題ないよね。
考えたら、わたしとユキセンセは連絡先を交換すらしてない。
だから、カズくんがこうして出動内容メールをくれる。とりあえずそれでどうにかなってるし、自分からセンセに連絡先なんて聞けないし。
ピンポーン、と無機質な音が響く。その音が消え入りそうな瞬間、スピーカーが繋がった。
『……』
そうそう。このちょっとの間のあとに、センセはいつも「はい」と言うみたいなんだよね。
『……ごほっ……はい』
「え。えぇと……向井です」
『…………けほっ』
咳と同時に大きな自動ドアが開いた。そこを潜り抜けながら考える。