クラッシュ・ラブ
「短期のバイト……代わってくれない?」
「バイト……?」
バイトなんて、わたしほとんどしたことない。
夏休みとかそういう期間でしか、経験ないんだけど……。
不安なわたしをよそに、メグは立て板に水のようにすらすらと話し始める。
「ほら、私の腐れ縁の和真(かずま)。アイツから誘われてたバイトなんだけど。
ふた月で大体出勤が14日。で、給料10万! 真面目にひと月びっしり働いて、同じくらいよね? 普通。だったら結構得じゃない? なんて思ってさー。引き受けたんだけど」
ああ、カズくんの繋がりか。だったら、直接断ればいーのに……。
“カズくん”の話はよくメグから聞いていた。
いわゆる、幼なじみというやつで、同い年。会ったことはないけど、たぶん、メグのこと好きなのかなーなんて話の中で想像したりしてるんだけど。
「でも、ほら、夏じゃない? 海、行きたいじゃない?」
「んー……わたしは、別に……」
海とかって性格じゃないし。水着なんて着れる体してないし。
「そしたらね! レイから誘われたんだよねー」
「海に? だったらその日だけ……」
わたしが言い掛けると、人差し指をスッと立てて、目の前に見せながらメグが言った。
「だめなの! 海は海カフェの手伝いついでの泊まりだから!」
今、困ってるはずのメグの心は、もうすっかり海に行ってるんだね……。
「じゃあ、謝って断るしか」
「それもだめなの!」
え、なんで。
さっきの人差し指を横に往復させながら、腰に手をあてて急に真面目顔になりながらメグが説明し始める。