クラッシュ・ラブ


いち、にー……さん。三時間と、ちょっと。


壁時計が存在しないリビングで、机の上の置時計をみながらカウントする。
ユキセンセが寝に行ってから約3時間。その頃には、さすがにわたしでも、与えられた仕事は終わっていた。


熱……下がったかな。食欲あるかな。
さっきはなにも食べたくないって言ってたから、薬も飲まずにそのまま寝ちゃったし。
本当は温かいものをちょっとでも食べて、薬を飲んでゆっくり寝れたらいいんだろうけど。

……やっぱり、ちょっと覗いてみよう。
悪化してたら心配だし。


そう思い立ったわたしは、そっとリビングを抜け出して、ユキセンセの寝室へと向かう。
しかし、いざ、扉の前に立つと、なかなかノックをする勇気が出なくて。
ややしばらくその場にいたけど、起きる気配もなさそうで、心を決めて扉を軽く叩いた。

一度目のノックでは、なんの反応もなく。
二度目のノックは少しだけ音を大きくしてみたけれど、やっぱり応答がない。

わたしは勝手に開けていいものか寸前まで悩んだけど、容態が気になる方が勝って、遠慮がちにドアを開けた。


「し、失礼します……ユキセンセ……?」


十数センチのドアの隙間から覗き込むようにして、声を掛ける。
それでも彼の声は聞こえてこなくて、センセの姿を探してみた。

ちょうど扉の正面にある大きなベッドに、センセの姿はあった。


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