クラッシュ・ラブ


それから数十分。
コンロの火を止めて、わたしはユキセンセを呼びに行く。

さっきと同様の流れを繰り返したのち、部屋を覗くと、やっぱり寝ているセンセの姿があった。

この短時間で、また熟睡出来てるっていうのがすごいと思う。


風邪引いてるから? それもあるかもしれないけど、おそらく、元々この時期は寝不足なんだ。
わたしやカズくんたちが来る前って、どんな生活してるんだろ。誰か来たりしてないのかな?

誰か、だなんて、もしそんな人がいるなら、わたしなんて呼ばれてないよね。


センセの寝顔を見下ろしながら、いろんなことを考える。
当たり前だけど、知らないことばかりで。こんなになにもわからないわたしが、なんで今、この人とふたりで過ごしているのだろう、なんてことまで考えてしまった。


そんなこと、今はどうでもいいじゃない。
それより、うどんが出来たけど……起こすべきか起こさないでおくべきか……。


またもや、うだうだと優柔不断になっていると、予想通り、センセが気配に気づいたのかゆっくりと目を開けた。

虚ろな目をしたまま、口を開かないセンセに声を掛ける。


「あの……うどんが出来ましたけど……大丈夫ですか? ここに持ってきます?」


わたしの言ったことは聞こえているはず。
でもすぐには返事がなくて、少し経ったあとに、のろのろと起き上がりながら言った。


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