クラッシュ・ラブ
空っぽのカップ
*
メグの代わりに引き受けた“仕事”。
その初日、わたしはカズくんと初対面で待ち合わせという、緊張状態の中にいた。
「あ、ミキちゃん? おれ、恵の幼なじみの――」
「あ、初めまして。お噂はかねがね……えぇと」
『カズくん』って、勝手にメグとの間では呼んでるけど、初対面の本人に向かってはなんて言っていいかわからなくて口ごもる。
ああ、しまった。連絡先を聞いたときに、苗字くらい聞いとけばよかったのに。わたしのバカ!
目を泳がせて明らかに困ったわたしを見て、カズくんは「ははっ」と笑って言った。
「いーよ。“カズくん”で」
「えっ……知って……?」
「恵がよく、『ミキが“カズくんと仲良いんだね”とか言うのよ! 腐れ縁なのに! ねぇ?!』とか、そのままの口調で話聞いてるよ」
「あ……はは、そう、なんだ。なんか、恥ずかしい……」
待ち合わせした場所から、カズくんの後ろをついて歩くと、5分ほどでとあるマンションに辿り着く。
そこのマンションに足を踏み入れると、カズくんがぼやいた。
「ったく。恵(あいつ)なら! こんなギリギリで『ごめーん。予定合わなくなっちゃって、ミキに頼んだからぁ』だって。全く疲れるやつだよ、昔から」
ぶつぶつと文句を言うカズくんはどこか淋しそうに感じた。
やっぱり、カズくんて、メグのことが好きなんじゃないのかな。
そんなことを考えてると、マンションのドアをカズくんが開けてくれて、慌ててそこに滑り込むようにして入った。
中に入ると外とは打って変わって、ひんやりとした空気。
きょろきょろとあたりを見てみるけど、なんの変哲もないマンションだ。
普段は管理人さんがいるであろう窓口や郵便受けを流し見てる間に、カズくんがオートロックの呼び出しボタンを押した。
メグの代わりに引き受けた“仕事”。
その初日、わたしはカズくんと初対面で待ち合わせという、緊張状態の中にいた。
「あ、ミキちゃん? おれ、恵の幼なじみの――」
「あ、初めまして。お噂はかねがね……えぇと」
『カズくん』って、勝手にメグとの間では呼んでるけど、初対面の本人に向かってはなんて言っていいかわからなくて口ごもる。
ああ、しまった。連絡先を聞いたときに、苗字くらい聞いとけばよかったのに。わたしのバカ!
目を泳がせて明らかに困ったわたしを見て、カズくんは「ははっ」と笑って言った。
「いーよ。“カズくん”で」
「えっ……知って……?」
「恵がよく、『ミキが“カズくんと仲良いんだね”とか言うのよ! 腐れ縁なのに! ねぇ?!』とか、そのままの口調で話聞いてるよ」
「あ……はは、そう、なんだ。なんか、恥ずかしい……」
待ち合わせした場所から、カズくんの後ろをついて歩くと、5分ほどでとあるマンションに辿り着く。
そこのマンションに足を踏み入れると、カズくんがぼやいた。
「ったく。恵(あいつ)なら! こんなギリギリで『ごめーん。予定合わなくなっちゃって、ミキに頼んだからぁ』だって。全く疲れるやつだよ、昔から」
ぶつぶつと文句を言うカズくんはどこか淋しそうに感じた。
やっぱり、カズくんて、メグのことが好きなんじゃないのかな。
そんなことを考えてると、マンションのドアをカズくんが開けてくれて、慌ててそこに滑り込むようにして入った。
中に入ると外とは打って変わって、ひんやりとした空気。
きょろきょろとあたりを見てみるけど、なんの変哲もないマンションだ。
普段は管理人さんがいるであろう窓口や郵便受けを流し見てる間に、カズくんがオートロックの呼び出しボタンを押した。