クラッシュ・ラブ
柔らかく、濡れた髪
*
「お疲れッしたー! あ、ミキちゃんは?」
午後の9時。ヨシさんが帰宅するのを、カズくんも帰り仕度をしながら挨拶する。
もちろん、“彼”は、あのまま寝っぱなしだ。
「え? あー……わたしは、えぇと……ユキセンセが、『起きたらご飯食べたい』って言ってたから、なんか作ってから帰るね」
「あ、そーなんだ。じゃあ、鍵、掛けて貰っていい?」
「あ、うん」
カズくんを見送って鍵を掛けると、またシンとしたリビングに戻る。
すでに、勝手にだけど片付けてしまった机に、そっと手を置いた。
隅に置いておいた、ユキセンセの『reach』に手を伸ばし、ぱらぱらとページを捲る。
もう読んだけど、なんとなく、また見たくなって。
いいなぁ。こんなふうに、自分の意思とか意見とかハッキリ言えるような性格なら。
漫画なのに、その主人公に向かって羨望感を感じるわたしはおかしいのだろうか。
チームメイトとすれ違って、それでもめげずに信念を貫くんだ、と言わんばかりに練習する強さとか。
もちろん、その主人公も落ち込んで、自力で立てないときがあるんだけど。
そんなときに支えてくれる、マネージャーの子と顧問の先生。
そうそう。マネージャーの子がなにか思い悩んでるときには、あのもう一人のマネージャーの“あゆみちゃん”が頼りにされてたっけ。
誰にでも、誰か支えになるような人がいて。
認めてくれる、その人たちが、大切な存在で。
そういうの、作り話でも羨ましいって素直に感じる。
だけど、今、この“あゆみちゃん”がなぁ……。自分に自信持てなくて、居場所がないって思ってるんだよねぇ。
そんな脇役の子に対して、直感的に思うんだ。
なんだか、わたしに――。
「お疲れッしたー! あ、ミキちゃんは?」
午後の9時。ヨシさんが帰宅するのを、カズくんも帰り仕度をしながら挨拶する。
もちろん、“彼”は、あのまま寝っぱなしだ。
「え? あー……わたしは、えぇと……ユキセンセが、『起きたらご飯食べたい』って言ってたから、なんか作ってから帰るね」
「あ、そーなんだ。じゃあ、鍵、掛けて貰っていい?」
「あ、うん」
カズくんを見送って鍵を掛けると、またシンとしたリビングに戻る。
すでに、勝手にだけど片付けてしまった机に、そっと手を置いた。
隅に置いておいた、ユキセンセの『reach』に手を伸ばし、ぱらぱらとページを捲る。
もう読んだけど、なんとなく、また見たくなって。
いいなぁ。こんなふうに、自分の意思とか意見とかハッキリ言えるような性格なら。
漫画なのに、その主人公に向かって羨望感を感じるわたしはおかしいのだろうか。
チームメイトとすれ違って、それでもめげずに信念を貫くんだ、と言わんばかりに練習する強さとか。
もちろん、その主人公も落ち込んで、自力で立てないときがあるんだけど。
そんなときに支えてくれる、マネージャーの子と顧問の先生。
そうそう。マネージャーの子がなにか思い悩んでるときには、あのもう一人のマネージャーの“あゆみちゃん”が頼りにされてたっけ。
誰にでも、誰か支えになるような人がいて。
認めてくれる、その人たちが、大切な存在で。
そういうの、作り話でも羨ましいって素直に感じる。
だけど、今、この“あゆみちゃん”がなぁ……。自分に自信持てなくて、居場所がないって思ってるんだよねぇ。
そんな脇役の子に対して、直感的に思うんだ。
なんだか、わたしに――。