㈱恋人屋 ONCE!
「どこ行く?」
「じゃあ…あそこ行くか。」
「あそこって?」
「ほら、よく二人で行ったじゃねーか。」
「…?」
郁馬が私の手を引っ張る。一体どこに連れて行かれるんだろう…と、私が心配しているのは、郁馬が昔から大の方向音痴だったからだ。子供の頃、近所の公園まで行こうとしたのに、そのまま駅まで行ってしまっていた、なんてこともあった。
「ほら、ここだ。」
「ここって…。」
「な?だから言ったろ?」
私達が着いたのは…公園。二人でよく遊んだ、思い出の場所だ。
「何か懐かしい…。」
いや、それは気のせいだろう。だって私はずっとこの公園の近くに住んでいたから。
「…俺も。」
…郁馬といるから、だろうか。
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