㈱恋人屋 ONCE!
それから私達は、他愛もない思い出話をした。他にも色々な所へ行ったが、結局この公園に帰ってきていた。辺りは夜へと変わり、月に雲がかかっていた。
「じゃあ、そろそろ帰るか。」
「そうだね。」
とは言ったものの、私は何か忘れているような気がしていた。それは郁馬も同じだったらしく…。
「紗姫。」
「?」
「…キス…させてくれ。」
「えっ、ちょっ、何言って…。」
言い終わらないうちに、郁馬は私の唇に自分の唇を重ねてきた。温かくて気持ちいい、郁馬の唇。幼馴染と言えど、唇の感触を知るのはこれが初めてだった。
「…紗姫。」
私の名前を呼ぶ、誰かの声。だが、郁馬の唇はまだ私の唇に付いたままだ。だとすると、この声は…?
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