㈱恋人屋 ONCE!
ビルの入り口を出たところで、私は菜月くんに会った。
「あ、菜月くん!」
「紗姫…?」
「どこ行ってたの?先輩達、心配してるよ?」
慌てて時計を見る菜月くん。
「ヤベっ!」
急いでビルの中へと入ろうとする菜月くんだったが、足を止め、私の方を向いた。
「…お人よし、なんだな。」
「?」
「いや、わざわざ迎えに来てくれるなんてさ。優しいな~って。」
「ただの性格よ、性格。」
「おっと、早く帰らないと。」
再び菜月くんが歩き出す。私はそれを追って、ビルの中に入った。
こうして、私の会社員初日が幕を閉じた。
…楽しいじゃん、世の中って。こんな所にあんな人がいるなんて、想像もつかない…。
< 20 / 200 >

この作品をシェア

pagetop