㈱恋人屋 ONCE!
「じゃあ、乾杯!」
「乾杯!」
ビールの入ったコップが、テーブルの少し上で音を奏でる。
「ぷは~っ…。」
ビールの冷たさが、疲れた体に染み込む。
「そういえば、今日ってあれの発売日だったよな…。」
菜月くんが言う。
「あれって?」
「ほら、あれだよ。『名探偵アラン』の最新刊の発売日。」
「何それ?」
「名探偵アラン」…つい最近、その名前を知った気がする…?
「え~!?」
先輩達、そして菜月くんの声が、一斉に喉から発せられる。
「紗姫って…。」
「『名探偵アラン』知らないの~!?」
ここで、私はようやく思い出した。「名探偵アラン」…それは、さっきジャックくんに渡した、あのマンガのタイトルだ。
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