㈱恋人屋 ONCE!
「…ほら。」
菜月くんは、ポケットからハンカチを差し出した。
「拭けよ。布団って、濡れるとカビ繁殖するんだぜ?」
「え?そうだっけ?」
「どっかで聞いた情報だけどな。」
私はハンカチを目の下に当てた。
「強くならないと、ね。」
「…そうだな。アイツに、復讐するためにも。」
「…うん。」
私達の絆が、かなり深まったような気がした。
「じゃあ、俺そろそろ行くわ。」
「え?帰っても特にやることなかったんじゃないの?」
「…ただの気分だ、気分。」
菜月くんは私に背を向けて歩き出した。私はその姿を、ただ眺めていた。
「…お前、好きな奴いたんだな。」
隣のベッドから、聞き覚えのある声がした。
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