鎖に縛れたお姫様
嫌な雰囲気。
蛇みたいにねっとりした視線。
・・・近づきたくない。
近づいたらダメだ。
本能がそう言ってる。
頭のどこかで大きな警報音が鳴ってる。
「なあ、もうすぐダンスが始まるな」
何かおもしろいショーでも始まるかのように、ソイツはあたしに告げた。
「・・・そうね」
気持ちをしっかり保たなきゃ。
思わず手をぎゅっと握る。
大丈夫、落ち着け。
ここじゃコイツは何にもできない。こんなに周りに人がいるんだから、何もで きっこない。
胸に手を当ててドクドク鳴る心臓を静めようとしたとき、
パッと、シャンデリアの光が小さくなった。
星みたいに輝いていた光から、沈みかけてる夕焼けのような淡い光になる。
会場がちょっとざわついた。
でもあたしとソイツは動かなかった。
足がその場に縫いつけられているかのように。
流れるようなバイオリンの音が聞こえてくる。
明るい、少し早いテンポ。
ダンスの、合図。
次々と手を取り合って、ゆうがに踊る人達。
楽しげな笑い声が聞こえてくる。
あたしの目の前からも。