鎖に縛れたお姫様
「さあ、一曲お願いします」
わざとらしくそう言うと、ソイツはあたしに優雅に手を差し伸べた。
その声が妙に優しすぎて怖い。
ていうかダンスなんてこんな奴と踊りたくない。絶対嫌だ。
・・・・・でも、
「どうした?まさか元、星月お嬢様がダンスを拒否するなんてしないよな?」
そう言われたらそれまでだ。
ここで嫌ってなんか言えない。
だってここで断ったら周りに疑問を与える。
だってコイツ、‘自分はこの人に丁寧に今、ダンスを申し込んでます’そんな感 じであたしに手を差し伸べてる。
みんな遠巻きにあたし達を見てる。
こんなところで・・・断れない。
なんとか対策を、頭の中でそう考えるあたしにソイツが告げる。
「どうした?なんならひざまずいてお願いしようか?お嬢様」
バカにしたような顔。
差し出された手。
全てに嫌気がさす。
でも、
「・・・お願いします」
そう言うしかない。
その答えしかない。
今のあたしにはこの、恐ろしい手を拒否するなんて事はできない。
「じゃあ、踊ろうか」